「終活って、もう始めたほうがいいのかな」「でも何から手をつければいいのかわからない」——そんなふうに思いながら、なかなか一歩を踏み出せずにいる60代の方は多いのではないでしょうか。
「終活」という言葉には、どこか重い響きがあります。「死の準備をするなんて縁起でもない」「まだ早い」と感じる方もいるでしょう。
でも実際に終活を始めた方の声を聞くと、「やっておいてよかった」「気持ちが楽になった」という感想が多く聞かれます。終活は「死の準備」ではなく、「残りの人生をより安心して、自分らしく生きるための準備」だからです。
この記事では、60代から始める終活で「最初にやること5つ」を、具体的にわかりやすく解説します。
そもそも終活とは何か?
終活(しゅうかつ)とは、人生の終わりに向けた準備を総称した言葉です。2009年ごろに週刊誌で使われ始め、今では広く一般に使われるようになりました。
終活の内容は多岐にわたります。
- エンディングノートを書く
- 財産・保険・年金などの情報を整理する
- お墓・葬儀について考える
- 不要なものを整理・処分する(老前整理)
- 家族への想いを伝える
- 介護・医療についての希望を書き残す
これらを全部一度にやろうとすると大変ですが、「できることから少しずつ」で十分です。終活に「正解」はなく、自分のペースで取り組むことが大切です。
なぜ60代から始めるのがよいのか?
終活は「高齢になってから始めるもの」と思っている方も多いですが、60代から始めることには大きなメリットがあります。
体力と判断力がある
整理や手続きには体力が必要です。書類を探したり、重いものを動かしたりすることも出てきます。60代のうちは体力・気力ともに比較的余裕があるため、自分のペースで取り組みやすい時期です。
自分の意思で決められる
「自分の葬儀はこうしたい」「お墓はここがいい」という希望を、自分でしっかり考えて決めることができます。病気や認知症が進んでからでは、自分の意思を伝えることが難しくなることもあります。
家族の負担が減る
終活の大きな目的のひとつは、残された家族への負担を減らすことです。財産の場所・保険の内容・葬儀の希望などを整理しておくことで、家族が困らなくて済みます。
気持ちが楽になる
「いざとなったらどうなるんだろう」という漠然とした不安が、準備を始めることで解消されていく方が多いです。先が見通せると、今の生活を前向きに楽しめるようになります。
最初にやること① エンディングノートを用意して書き始める
終活の入り口として最もとりかかりやすいのが、エンディングノートを書くことです。
エンディングノートとは?
エンディングノートとは、自分の希望・大切な情報・家族へのメッセージなどをまとめておくノートです。遺言書とは違い法的な効力はありませんが、家族への「手紙」として大きな意味を持ちます。
書店・100円ショップ・インターネットなど、さまざまな場所で入手できます。フォーマットが決まっているものから、自由に書けるシンプルなものまで種類も豊富です。
エンディングノートに書いておくべき内容
基本情報
- 氏名・生年月日・本籍・住所
- 血液型・健康保険証番号
家族・親族の情報
- 家族・親族の氏名と連絡先
- 交流のある友人の連絡先
財産に関すること
- 銀行口座の一覧(銀行名・支店名・口座番号)
- 所有している不動産の情報
- 株式・投資信託など金融資産の情報
- 加入している保険の内容と連絡先
医療・介護に関する希望
- かかりつけ医の名前と連絡先
- 服用している薬の情報
- 延命治療についての考え方(どこまで望むか)
- 介護が必要になったときの希望(自宅か施設か)
葬儀・お墓に関する希望
- 葬儀のスタイル(家族葬か一般葬か)
- 宗教・宗派
- お墓についての希望(樹木葬・永代供養・散骨など)
デジタル関連
- 使っているSNS・メールアカウントの情報
- ネットバンク・ネット証券のIDとパスワード(管理方法も含めて)
家族へのメッセージ
- 感謝の言葉・想い
エンディングノートを書くコツ
完璧に書こうとしなくて大丈夫です。書けるところから少しずつ書いて、気持ちが変わったら書き直せばよいです。鉛筆で書いても構いません。「書き終えること」より「書き始めること」が大切です。
保管場所は、家族が見つけやすい場所に置いておきましょう。「引き出しの中に入れてある」と家族に伝えておくか、目立つ場所に置くのがよいでしょう。
最初にやること② 財産・保険・年金の情報を整理する
自分の財産や保険がどこにあるか、家族が把握できていないケースは非常に多いです。本人が急に倒れたり、認知症になったりした場合、家族が困ることになります。
整理しておきたいもの
銀行口座
口座を複数持っている方は、使っていない口座も含めてリストにまとめておきましょう。銀行名・支店名・口座番号を書いておくだけでも大きな助けになります。
生命保険・医療保険
どの保険会社に何の保険を掛けているか、保険証書はどこにあるか、連絡先はどこか。意外と家族が知らないケースがあります。
年金
年金手帳のありか、受給している年金の種類と金額なども確認しておきましょう。
不動産
土地・建物の登記簿謄本のありかや、固定資産税の通知書の保管場所も整理しておくとよいでしょう。
デジタル資産
ネット銀行・ネット証券・電子マネーなどは、ログイン情報がわからないと家族が困ります。ただし、パスワードの管理には注意が必要です。紙に書いてエンディングノートと一緒に保管する、あるいはパスワード管理ツールを使うなどの方法があります。
最初にやること③ 身の回りを少しずつ整理する(老前整理)
老前整理とは、高齢になる前の元気なうちに、不要なものを整理・処分しておくことです。終活の一環として多くの方が取り組んでいます。
なぜ今のうちに整理するのか
体力があるうちに整理しておくことで、自分のペースでじっくり取り組めます。また、家族に「捨てるか残すか」の判断をさせることなく、自分の価値観で決めることができます。
亡くなった後に遺族が行う「遺品整理」は、精神的にも体力的にも大変な作業です。老前整理をしておくことは、家族への大きな贈り物になります。
どこから始めるか
一度に全部やろうとすると疲れてしまいます。場所や種類を絞って、少しずつ進めましょう。
始めやすいもの:
- 押し入れ・クローゼットの衣類(着ていない服を処分)
- 書類の整理(古い説明書・期限切れのクーポンなど)
- 台所の整理(使っていない食器・賞味期限切れの食品)
- 本・雑誌・CDなど
最後に回すもの:
- 思い出の写真・アルバム
- 大切な手紙・日記
感情が絡むものは時間がかかります。最初は「明らかに不要なもの」から始めて、慣れてきたら思い出の品に取りかかるのが現実的なやり方です。
売れるものは買取サービスへ
捨てるのはもったいないと感じるものは、買取サービスを活用しましょう。宅配買取なら段ボールに詰めて送るだけ。売れなかったものは返送してもらえるサービスもあります。本・CD・DVD・衣類・食器・ブランド品などが対象になります。
最初にやること④ お墓・葬儀について調べ、家族と話し合う
「まだ早い」「縁起でもない」と避けがちなテーマですが、60代のうちに一度調べておくことをおすすめします。
お墓の選択肢を知る
現在は墓石のお墓以外にも、さまざまな選択肢があります。
- 樹木葬:木や花を墓標にした自然葬。後継者不要のものが多い
- 永代供養墓:霊園が管理・供養してくれるお墓
- 納骨堂:屋内施設に遺骨を納める方法
- 散骨:海や山などに遺骨を撒く
それぞれ費用・管理方法・雰囲気が異なります。「どれにするか決める」前に、まず「どんな選択肢があるか知る」ことから始めましょう。
葬儀についても考えておく
近年は、小規模な「家族葬」を選ぶ方が増えています。大勢の人を呼ぶ一般葬と比べて費用が抑えられ、家族だけでゆっくり送ることができます。
「大がかりな葬儀はしなくていい」「呼ぶ人はここまで」など、自分の希望をある程度決めておくと、家族が判断に迷わなくなります。
家族と話し合う大切さ
お墓・葬儀の話は、家族と事前に共有しておくことが大切です。「自分はこうしたい」という希望を伝えておかないと、家族が判断に困ることになります。
いきなり深刻な話にしなくても、「最近こういうことを考えていて……」と軽い雰囲気で切り出すだけでも構いません。
最初にやること⑤ 医療・介護についての希望を書き残す
自分が病気になったり、介護が必要になったときのことを、元気なうちに考えておくことが大切です。
延命治療についての考え方
もし自分で意思表示ができなくなった場合、どこまでの治療を望むか。「できる限り治療してほしい」「自然な形で最期を迎えたい」など、人によって考え方はさまざまです。
この希望をエンディングノートに書いておくことで、家族が判断に迷う場面を減らすことができます。「尊厳死宣言書」という形で公正証書にする方もいます。
介護が必要になったときの希望
「自宅で介護してほしい」「施設に入ることも考えている」「介護で家族の生活を犠牲にしてほしくない」など、自分の希望を書き残しておきましょう。
また、かかりつけ医の情報・アレルギーの有無・服用薬の一覧なども、もしものときに役立ちます。
まとめ:終活は「今日からできること」から
終活は一度に全部やる必要はありません。まず「エンディングノートを1冊買う」「銀行口座を1つ確認する」——そんな小さな一歩から始めてみましょう。
60代のうちから少しずつ準備しておくことは、将来の自分を助けることでもあり、家族への思いやりでもあります。「やっておいてよかった」と思える日が必ず来ます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。法律・税務・医療に関わる事項は、専門家にご相談ください。

